大判例

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高松高等裁判所 昭和27年(ネ)48号 判決

控訴代理人は本案前において原判決を取消す。本件訴を却下する本案において原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とするとの判決を求め被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は控訴代理人において控訴人は原審において本件差押に際し被控訴人主張の不動産の提供を申出でたことを認めたが、右は錯誤に基くものであるからこれを取消す。即ち松山税務署大蔵事務官松根朝久等が本件差押を執行した後、被控訴人から単に土地を提供する旨の申出を受けたに過ぎない。従つて仮りに本件物件が国税徴収法第十七条第二号所定の「職業に必要な器具」であるとしても同条第一項所定の他の物件を提供したものとはいえないと述べた外は原判決事実摘示と同一であるからここにこれを引用する。

(各証拠省略)

三、理  由

よつて先ず本訴が適法であるかどうかについて判断する。

税務署長のなした国税滞納処分に対し異議あるものは当該処分をした税務署長に対し右処分の通知を受けた日から一ケ月以内に不服の事由を記載した書面を以て再調査の請求をなし、これに基く決定(再調査の決定)に対し国税局長に審査の請求をしてその決定(審査決定)を経たうえ訴を以て滞納処分の取消を求めうることは国税徴収法第三十一条の二ないし四、行政事件訴訟特例法第二条により明白である。然るに、被控訴人は本件滞納処分に対し控訴人に対し、その差押当日口頭を以て異議を述べたというに止まるから、被控訴人は右滞納処分について控訴人に対し法定期間内に国税徴収法所定の再調査の請求をしなかつたものというの外ない。被控訴人は仮りに再調査の請求は書面によらねばならぬものとしても、被控訴人は、右口頭による再調査の請求に基いて差押の一部を解除した事実があるから、これにより被控訴人の再調査の請求の不備は治癒されたものであると主張し、控訴人が本件差押完了後差押物件の一部を解除したことは控訴人の自認するところであるけれども、その解除が処分取消決定によりなされたものであるとの証拠はなく、却つて当審証人松根朝久の証言によれば被控訴人自ら自由裁量処分として解除したものに過ぎないことが認められるから、右解除を以て再調査の不備を治癒しうるものとの被控訴人の主張は当らない。次に被控訴人は本件差押物件は滞納者たる被控訴人の保管に委ねられているけれども収税吏はいつでもこの保管を解き自ら占有しうる状態にあり、かつ差押物件は公売に付せられるのであつて公売については滞納者に通知するの要がないから、被控訴人が訴願の裁決を待つて訴を提起するとすれば、その間に職業に必要な差押物件の占有は奪われ職業に支障を来すばかりでなく、不知の間に公売手続は進行して遂に訴願の裁決を経る利益を喪失する結果となる。従つてかような場合は「訴願の裁決を経ることによつて著しい損害を生ずる虞あるときその他正当なる事由あるとき」にあたると主張するが本件差押物件は差押とともに被控訴人に保管を命じ使用を許可しておるものであること当事者間に争のないところであるから、損害を生ぜしめておらず、将来公売する際にも公売公告の初日からその期日までに少くとも十日間の期日を存するし、その実行のためにはそれまでに所定公売執行場所まで差押物件の運搬せなければならない次第であり、且つ又当審証人松根朝久の証言によれば、松山税務署においては、公売せんとするときは、公売通知を滞納者に通知しておるのみならず、差押の日から公売公告の日までには、通例三十五日から四百七十日位(平均三百日位)を存しおり、被控訴人に対しては、未だ公売日時の公告をしておらないことが認められ、右認定事実から考えるときは公売処分実施の日が切迫しているようなことのないことが認定できる。それ故右の事由を以て被控訴人主張のような「正当な事由」ある場合ということはできない。

以上説明のとおりであつて、結局被控訴人は右滞納処分について、控訴人に対し法定期間内に国税徴収法所定の再調査の請求をしなかつたものというの外なく、被控訴人が右手続を経ることなく直ちに、本訴を提起することを正当と認むべき事由も、また存在しないから、被控訴人の本訴は訴訟要件を欠き、その欠缺は補正し難いものといわなければならない。よつて本案の判断を省略し本訴は不適法として却下すべくこれと符合しない原判決は失当であるから取消すべきものとし、民事訴訟法第三百八十六条第九十六条第八十九条を適用し主文のとおり判決する。

(裁判官 前田寛 萩原敏一 裁判官 近藤健蔵は病気のため署印することができない 裁判官 前田寛)

(別紙目録省略)

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